「科学者の社会的責任」について (2)
第3部 第4章「唐木順三と武谷三男の論争」1.「現代科学技術の倫理的批判と超越性」
現代世界では個人の自由が尊重されているようだが、実際には国家と経済組織の利益が優先されて、そのために個人の自由が大いに制限される傾向と裏腹である。とりわけ格差による自由の制限が大きい。そして、そのことになかなか気づくことができないように世論誘導がなされている。(島薗進さん)
だが、これは原子力だけに関わることではない。医学と製薬会社など医療関係の経済組織の関係もますます深くなっている。そして自国での科学研究を後押しすることで、自国の経済を活性化しようとする国家の意図も強力に作用するようになっている。そうした体制の下では、科学者の自由も科学の恩恵を受ける市民の自由も大きな制限を受けることになる。(島薗進さん)
では、国家や経済組織は誰のための利益を重んじているのか。国民や世界の人々のために市場経済を拡大させ、人類全体の福祉を増大させるという建前だ。だが、実際にそうなるのだろうか。(島薗進さん)
以下では、この唐木と武谷による討議を振り返りながら、科学技術に対する宗教性・超越性を基盤にした批判の意義について考えてみたい。(島薗進さん)
このあと、島薗進さんによって 唐木・武谷論争の 内容が 詳しく 論じられています。