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[渡辺敦雄] "浜岡原発の 技術的課題" (4月 7日)
シンポジウム "東海地震浜岡原発" から。 紙上講演会 (長いです) ...

原子力施設と 書いてありますね。 原子力施設の テクノロジーとの 違いということを まず 認識していただきたいんです。

原子力というのは、例えば ガンの 放射線治療のように 非常に わたしたちの 役にたつ、ありがたい 技術でも あるわけです、一方では。

しかし、原子力技術というのを わたしたちは まず 認識したほうが いい、原子力施設の。 発電所と イメージしても かまいません。

事故の 規模が メチャクチャ 異なる、大きい。 どういう 意味かと いうと、電力会社の ほうで 責任が とれない、一つ ある 事故が 起きると。 いまの 東京電力さんが そうですね。

次に 放射能、すなわち 使用済燃料の 処理方法が 未確立である、これですね。 核変換と いいまして、煮ても 焼いても クスリを 入れても、放射能というのは 基本的に 絶対に なくなりません。 なくなる 方法は たった 一つ、時間だけです。

これが 半減期と いわれて、例えば セシウム 137 は 毒性が 半分に 減るのは 30年、60年後に やっと 4分の1、90年 たっても せいぜい 8分の1。

みなさんが 今、もし 放射能に 汚染されているとしたら、現在の 状況では セシウム 137 が 主流ですので、100年間 たっても 現在の 状況が やっと 8分の1 ぐらいにしか ならないんだと いうことを、まず 認識してください。 これは とっても 大事なことです。

それから 浜岡の 3号機には プルトニウム・サーマルリアクタ、略して プルサーマルという 燃料が 使われる 予定だと。

この プルトニウムですが、実は 半減期が 2万4000年、そうすると 10万年 たっても せいぜい 16分の1、これ たいへんなことです。

プルトニウムというのは 重くて、容易に われわれの 身体には 入りにくいものです、これは 事実です。 しかし ひとたび 入ったら、10万年間で 16分の1 にしか ならない。 人間の 生命から 考えたら、もう ほとんど 減らないと 思っていい。

それから 原子力施設は、もしかしたら 他の 方法が あるかもしれない。 これは わたしの 言葉では ありません、小出さんが よく いいます 「たかが 電気じゃないか、なんで 原子力を 使うの ?」、こういう ことなんですね。

例えば 放射線治療、あるいは 遺伝子の 改良に 放射線を 使う、これからも 行われると 思います。 こういうものは 放射線以外に 方法が ないんです。

ガンの 放射線治療放射線以外に 方法は ありません。 例えば 脳腫瘍で ガンマ照射というのが ありますけど、これは 他に 方法が ないんです、代替法が ありません。

ですから、これは ある 意味では、その 人の 判断で やむをえないと 思っても いいと 思うんですが、他に もし 代替法が ある こういう 施設であれば、わたしは ちゃんと 比較を して、みなさんが 一人一人で 考えるべきだと 思います。

福島の 原子力発電所の 事故では、今までの 原子力の 原子炉設計哲学が すべて 破綻しています。

わたし自身、勉強して 青雲の 志を いだいて 原子力発電所の 設計に 入りました。 しかし、そういったときの 設計思想が 今回、すべて 破られています。

一つは 深層防護、まず 事故を 防止すると いうこと、これは もちろん できなかったですね。 それから 事故の 拡大防止、破綻防止。 事故が 拡大して 発電所が まいったなと いうことを 防止しようと、これも ダメでした。

そして 3番目の、深層防護というのは 5段階 ありますけど、5段階目は 政治的な 問題なので、3段階目までが 機械なんですが、環境への 影響防止、これも ついに 破れたんですね。

もう 一つ、よく 前から いわれる 多重防護、5重の 壁、これは 全部 破られたんです、しかも 同時に。

それから 確率論的安全評価、とても むずかしい 概念ですが、簡単に いうと、事故というのは、例えば みなさんの 家庭で 冷蔵庫が 2つ あるとします。 2つの 冷蔵庫が 同時に 壊れることは ないという 考え方です。 1個 壊れても 1個は もつ。 やがて 壊れるかも しれませんけど、同時に 同じような 理由で 壊れることは ないというのが、単一故障基準です。 これが 原子力発電所で 採用されていました。

しかし 今回、何が 起こったかと いうと、同時に 同じ 原因で あらゆる 機械が 壊れてしまった、これが 共通原因故障です。

例えば、浜岡 1号機の 運転停止訴訟の ときには、裁判官は 何と いったかと いうと 「共通原因故障は あり得ない」、こう いったんですね。 しかし 今回は 起こりました。

浜岡原子力発電所の、これが わたしの 今日の テーマですけど、特殊性について。

まず 2つ あります。 1つは、今でも わたしの 名前のある 図面を 中部電力さんが 使用していると 思いますが、構造上の 問題。

MARK I という 原子炉格納容器が ある。 これはですね、LOCA 冷却材喪失事故、今回 起こりましたけど 福島で、こういった 事故に PCV 原子炉格納容器のうち、抑制プールが 破壊される 可能性が 高いと いうことです。

これは 構造的に 非常に 問題を 含んでいます。 浜岡の 原子力発電所の 5号機は MARK III という 型で、これは 改良型の 3番目という 意味ですが、かなり 改善されています。

それから みなさん お気づきの 地震ですね。

MARK I 型、MARK II は 今回 関係ないので とりあえず とばします、MARK III 型。 こういう 形で 原子炉格納容器は 発展してきました。

現在は MARK I が 1号機から 4号機まで、そして MARK III が 5号機です。

みなさん お気づきだと 思いますが (MARK I は) 非常に 複雑ですね、形が。 安定していないとは いいません。

しかし、複雑だと いうことは、シンプル イズ ベストという 言葉が ありまして、機械設計では 非常に 複雑なものは 危険が あると いうふうに いわれてます。

これを 見ると わかりますが 水が (原子炉の) 下に ない。 これが MARK I 型の 格納容器の 非常に 大きな 特徴でして、水が ないことをもって この 格納容器を 採用したと いっても 過言では ありません。 今回、燃料が もれて ここに 来た。

(MARK III で) もし こういうかたちで もれたら どうなるか。 これは 水素爆発どころの 騒ぎでは ないです。 チェルノブイリのような 水蒸気爆発、水と 反応する 爆発が 起きます。 それが MARK III の、浜岡 5号機の 一番 ぼくらは 心配です。

そして (MARK I では プールとの 継目) このような 部分が やられると いうのが、わたしたちが 一番 心配している。 もし ひとたび 蒸気が 出てしまうと、非常に 複雑な 部分が やられると いうことが 1号機から 4号機の 問題だと いうことを 認識してください。

地震の 話ですが、政府の 報告書から 抜粋したものですが、去年の 6月頃に でたものです。 地震は プレートの 境界で 起こるというのは すでに ご承知だと 思うんですが、この プレートの 大きく くいこんでいる ところが 御前崎です。

そして 津波の 問題ですが、これは 福島の 太平洋沖地震で 起きた 津波の 高さを 示している。 これを よく 見ていただくと わかるんですが、20m から 40m の ところが ものすごく 多いと いうことですね。 平均では 18m ぐらいだと いわれていましたけれども、けっして そういうわけでは ない、局部的には 高いところが ある。

地震に 関して 結論的に 申します。 浜岡で 考慮すること。 これは 地震学者でない わたしの 話を 聞いても、みなさん 信用しないと 思いますので、纐纈一起先生、東大の 教授ですけども 7月末に 政府の 委員を 辞任しています。

そのときの 会見の ようす、後に 本も 出してますが、「立地を 問わず」 つまり 浜岡なら 浜岡という 場所を 問わないで 「過去最大の 揺れと 津波を、同じ 重みをもって、安全性を 考慮するように 改めるべき」、基準地震動 つまり 震動の 大きさは、世界最大のものを 使えと。

結論を いうと、マグニチュードは だいたい 9.5、今 9.1 を 想定していますが 9.5、地震の 隆起は 中部電力さんは 1m を 想定してますが 7m、そして 津波の 高さは 現在 15m を 想定してますが 40m を 想定しなさいと いうことを、彼は いってるわけです。

最後に なりますが、耐震設計という 言葉を 聞いたことが ありますか ? 中部電力さんは 耐震設計では もつと いっています、これは 事実です。

おそらく わたしの 経験では、基準設計地震動 1000ガルという 加速度で やっています。

そして ちなみに 直下型の 場合は、柏崎の 場合は 2100ガルということで 約2.1倍ですね。 耐震設計を やる 場合には けっこう できるんですね、設計と いうのは。

ところが 直下型の 場合、地盤の 沈下と いうのが あります。 こうなったら どうか、中部電力さんは 1m と いっています。

さっき ぼくは 7m と いいましたが、7m くずれたら、地盤が なくなったら、どういう 世界が 展開するのか。

これは 耐震設計じゃ ないです。 耐震設計という 概念から はずれて、こういう 設計は 誰も していません、原子力発電所では。 していないと いうことを 知っておいてください。

津波の 高さですが、いうまでも ないことですね。 すでに ある 特定の シュミレーションでも、御前崎に 21m の 津波が 来るというから、すでに 想定の 15m そのものが 前提条件として 成り立たなくなっている。 そして 纐纈先生の 理論で いうと、40m の 津波が 来ると いうことなんですね。

海水ポンプ系も すべて 問題が あるということ、引き潮と いうことで 水が なくなってしまう。

多くの 方は ご存知だと 思うんですが、井戸の 水、呼び水と いうのが あります。 わたしも やりましたけど、必ず 呼び水を 入れる。 いったん 空気を 吸い込むと 水は 上がってきません。

同じようなことが 引き潮で 起きるんですね。 福島では 300m ぐらい 沖に 潮が 引いてしまったんです。 (しかし) 中部電力さんの 場合は 注水口が 600m ぐらい 先に ありますから、起きにくい。

さっき 9000本という お話が ありましたが、使用済燃料は たいへんな 量が あります。 浜岡原子力発電所の 使用済燃料の 保管は、最終的には 乾式が 必要だということを わたしは 考えています。 丘の 上に 建てればいいと 思います。 ひとことで いうと 扇風機で 冷やす、こんな 感じで、

もっとも 欧米では 基本的には 空冷が 主流に なっています。 なぜ 日本では 採用されないのか ? 敷地が 非常に 広く 必要なんですね。 日本のように 敷地の 限られたところでは、効率が よくない。


最後に ひとことですね、わたしは 危機管理というのは、そもそも 一番 恐ろしいことを 想定すると いうことだと 思います。

市民の 方が 一番 恐ろしいことを 想定すると いうことは、自分では SPEEDI を 計算することは できませんよね、何億と かかるわけですから。

ですから、早く 中部電力さんと それから 静岡県、県庁に、市民の 方が 早く 自分のところが もし 浜岡が 福島のような ことに なったら、どういうふうに 汚染されるのかと いうことを、早く みなさんが 知るように、やはり 運動を 盛り上げていくことが 大事なんです。

そうすれば 自分で 計算できるんですよ、これは 1日後には ヤバいぞと 思ったら。 そういうふうに 最悪の 事態を 自分で 想定できるように、みなさんが 運動を 盛り上げてもらいたい。 わたしも 市民の 一人として 動きますので、ぜひ いっしょに がんばっていきたいと 思います。

(映像)
http://www.ustream.tv/recorded/21650804 (video - 1 hr 22 min)
http://www.ustream.tv/recorded/21652288 (video - 1 hr 10 min)
(追記) 地震学者の 纐纈さん、NHK の MEGAQUAKE II にも でてましたね。
http://kirokuya.hamazo.tv/e3550598.html