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[山崎久隆] "福島第一原子力発電所事故と 津波" (8月 8日)
町田市で 行なわれた 講演から。 ちょっと 長いです ...

(地形の) 構造で 見て わかるんですが、この辺 みんな 崖地なんですね。

崖地だと 何が 起きるかと いうと、やってきた 津波は タービン建屋に ドスンと ぶつかって 抜けていきますが、行き先は ありませんので この辺に 溜まります。 周りから いうと この 敷地が クボミに なってるもんですから、ここに 海水が 溜まりやすいんですね。

さらに この 前面海底は 5m、沖合いは 10m ぐらい あります。 海から みると この 部分は 浅いし、浅い 海底に ぶつかって 津波の 波高は 上がります。

上がったまま ぶつかると 津波は この 内陸で 阻止されます。 敷地の 幅は 300m から 400m、行き場を 失った 水は 溜まり続けます。

津波と いうのは 普通、波と 違って 後から 後から 押し寄せるものです。 10数分ぐらいに わたって 押し波が 続きますので、周辺の 水位は 最大 14m から 15m まで 上がりました。

そのくらいの 高い 波が この辺を 覆ってしまったために、タービン建屋の 中に 入っている 非常用ディーゼル発電機と それから 電源盤、すべて 水没して 使い物に ならなくなりました。

それが 原子炉が 溶けてしまった もう一つの 原因、電源喪失ですね。

確かに その通りなんですけども、ここの 防潮堤は 5.5m ある、ものの 役に たたなかった 高さだった。 だけでは なくて こちら側、5、6号機のほうに ある 防潮堤は 10m あるんですが、こちらも 実は 閉じられた 防潮堤では ありませんので 阻止するような 構造には なっておりません ...

この 船着き場の 高さは 4m、この 原子炉は 4mしか ささえられない 構造に なっていました。

なので、確か 東電は 最初、この 原発津波対策は 5.7m と発表してましたね。 今、IAEA への 報告書を 読んで それが はっきりしました。

設計時点で この 原発は 3.1m の 高さで 設計しています。 この 船着き場が 4m ありますから、それより 1m 弱 高いわけですので 3m の 津波なら ここを 越えることは ありません。 防潮堤も 5.5m ありますので、3.1m なら 十分 耐えられます。

3.1m の 津波でも 耐えられるという 設計が、ある日 突然 5.7m に かってに 書き換えられます。

阪神淡路の 大震災が 95年に ありました。 その後、日本の 原発は 大丈夫なの? と みんな 思うように なりました。

その 当時の 耐震設計の 審査指針というのが ありました。 つまり この 基準に したがって 原発は 建設してください、と 国が 定めた 指針、それが どうも 現実に そぐわないのでは ないか、特に 揺れの 大きさが 耐震指針が 設定している 揺れより はるかに 大きなものが 襲ってくるのではないかと いうことが いわれました。

その 審査の 会の 中に 実は 原発に 非常に 批判的で 原発震災という 言葉を 生んだ 石橋克彦さん、当時 神戸大学の 教授が いました。 彼も 含めて 何人かが 原発の 耐震設計は 非常に 危ないと いうことを いいまして、それで 設計指針の 書き換えが 行なわれたんですね。

ところが 実際に 津波対策は、地震対策を 見直したんだから、それに 付随する 津波についても 十分 対策を とるように、それが 耐震設計指針の 最終決定です。 津波は ほとんど 無視されたんです。

地震の ほうは 少し 考え方を 変えまして、それまでの 想定地震動よりも 非常に 大きなものを 想定しなさい、と。 それでも 安全で あることを すでに 建ててしまった 福島第一のような 原発、これは 旧耐震設計指針よりも さらに 前だったんですね。

旧耐震設計指針は そもそも 80年代に できて (注)、実は この 原発を 建てたのは 70年代、設計は 67年に 行なわれて 建設が 始まったのが 69年。 70年代に 運転開始を してますから、旧耐震指針よりも さらに 古いので、もっと 基準の ない 時代に つくられたのですね。

(注) 旧耐震設計指針が できたのが 1978年なので、これは 山崎さんの カン違いです。

その 基準の ない 時代に つくった 原発を 止めてしまえば よかったんですが、止めたくないもんだから どうしたか?

2006年の 段階で 今の 最新の 設計指針に てらして 安全か どうか 審査しなさい。 これを 誰が 審査するの? 電力会社が 審査しなさい。 笑っては いけないんだけど、笑うしか ない。 電力会社が 自ら 審査して 報告書を 保安院に 提出し、それを 国の 審議会が チェックして、それで ゴーサインを 出すという こんな バカバカしい ことを やってたんです。

福島第一は その 途中でした。 ただし 3号機だけは プルサーマルを やってるもんですから、中間報告書を 先に 出しているんですが、まあ 推して知るべしと いう、安全ですと いう ただ それだけの 報告書ですね。 いろいろ 書いてありますけど 今さら 読む 価値は ありません。

そういう バックチェックを やったときに、なぜか 津波の 対策が 5.7m OK に なったんです。 なぜ そうなったのか? 今、調べてます。 誰が? 東電が。 笑い話ですが、 ほんと そういう 世界ですね。

なぜ 5.7m OK に したのか? 土木学会 原子力部会と いうのが ありまして、原子力部会が この 構造でも 耐えられますよ、と。 そのためには この中に 海水ポンプが あるんですけど ちょっと 低すぎるので かさ上げしてね。 どれだけ? 20cm。 それで 20cm かさ上げしただけで 5.7m 耐えられることに なってしまったんです。

いまだに 理由は 不明です。

さらに この タービン建屋の 中に 非常用電源が 入ってますよね。 こういった もろもろが 波が 押し寄せてくれば 水没したら 終わり。 みんな 誰でも 想像することですから 東電だって 知ってます。

私も 交渉のとき 何度も いいました、津波が 襲ってきて 水没したら 非常用電源 ダメですよね。

はい、その通りです。 でも 5.7m 以上の 津波は 来ないです、ダイジョウブです。 しかも この 敷地の 標高は こちら側は 10m あります。

つまり 10m を 越える 津波が やって来るなんて、まして 起こりうるわけが ない。 来ないものに 対して 対策する 必要なんか ないでしょう、これが 東京電力の 考え方だし、未だに すべての 原発は その 考え方の ままです。

対策を とってるかのような フリを してるところは いっぱい ありますが、全部 そんなの ウソです。

非常用電源の 代わりに 電源車を 繋いでる ところが ありますけども、電源車と いうのは 要は 非常用の バッテリーと 同じで あんなものは 数時間も 運転を 継続したら 焼け付いてしまうんですね。 電源車を ずっと 運転し続けて 1日も 2日も 持つと 思ってたとしたら それは ムチャクチャです。 冷却不能に なって ヒートアップして 終わりです。 そういう シロモノが 電源車なんですが、そういうものを 何台か 繋いで OK に してるのが 玄海原発とか そういった ところなんですね。

他に 何も 対策が してありません。 もちろん できないからです、簡単には。

津波対策しろと いったって そりゃ ムチャでしょう。 そういうのが 現状です。 なので、東京電力津波対策は まったく 存在しないに 等しかった。

それを 称して、非常に 巨大な 津波が 襲ってきたから アウトだったと いうのは、それは 言い訳、すり替えの 論理と いうのですね。 ここを 襲った 津波が 仮りに 6m で あっても ダメだったんですよ。 6m って 巨大な 津波ですか?

そもそも 13m の 津波だったって いうことも、この 地形が 13m に しただけなんです。 ほんとうに この 原子炉の 前面海面に 来た 津波の 高さは 何m だったのか? 今、調査中です。

私たちも 調査中です。 実際 10m は なかったと いうふうに 考えています。 写真という 証拠が 残っています。 10m の 防潮堤を 乗り越えてくる 波の 写真が 残ってました。 その波は 白波を たてています。

津波が この 堤防を はるかに 越える 高さ、13m で あったとしたら 白波は たちません、水没して 終わりです。 完全に 見えなくなって 消えてしまいます。

それは、気仙沼の 防潮堤とか あるいは 田老の 防潮堤とか、そういった 映像が たくさん 出てますが、10m の 防潮堤に 対して 13m の 波が 襲ってくると 防潮堤は 水没し 跡形もなく 破壊されます。 津波と いうのは それだけの エネルギーが あります。

この 防潮堤が 生き残ってると いうことは、ぶつかった 波は 乗り上げてきましたが、この 防潮堤を 崩壊させるほどの 高さは なかったという 証拠です。

13m に した 理由は なにか? この辺の 建物について 痕跡を 測るわけですね。 13m あった、15m あったと やるわけです。

そこで 襲ってきた 津波は 15m に いつのまにか 化けてしまうわけですが、津波と いうのは 押し寄せてきたときの 海面上の 高さを 津波波高と いいます。

ぶつかって 乗り上げてきた時、それは 津波の 浸水高と いい、さらに 斜面を 駆け上がっていった 最大到達点、これを 遡上高と いいます。 この 3つの 概念を 使い分けなければ、津波の ほんとうの 姿は 見えてきません、これは 常識です。

なぜならば、ゆっくりとした 津波であれば たとえ 10m で あっても、この辺を 水没させるだけで 何も 破壊しないで 終わってしまうと いうことも 理論的には あり得るからです。 ところが、6m 程度の 津波でも 進行エネルギーが 非常に 高ければ、遡上高で 20m ぐらい 上がって この辺を メチャクチャに していくことも あり得るんです。

津波の 高さだけでは なく その 浸水高、それから 遡上高が 何m で あったのか、それらを 分析しないかぎり 津波防災は できない。

原発に 関して いうならば、ほんとうに どれぐらいの 津波が 襲ってきたのか、それが 想定を どれだけ 越えていたのか、その 越えたのが 誰の 責任なのか? 東電の 責任と いうことは まず 間違いないんだけど どの 程度の 重さなのか、と いうことを 追求するときに 非常に 重要に なります。

なぜならば 原子力の 災害に 対して 賠償する 法律、それを 原子力損害賠償法と いうのが あるんですけども、その 3条には 「異常な 災害」 -- 隕石が 落下するような レベルを 考えてください -- それは 確かに リクツの 上では 起こり得るけども、そんなものに 対策しろと いわれたら 何も つくれない -- つくらないほうが いいんですが。

そうは いっても 保険の 世界では そうも いかない、あるんだから 保険を 掛ける。 その 異常な 天然災害とは 何かと いうと、具体的には 何も 書いていない。

そこで どういうふうに 考えるかと いうと、2つの 考え方が ある。 1つは 隕石の 落下のように 想定し得ない、想定不可能な そういう 災害。 もう 1つは 過去の 歴史上 なかったような 巨大な 災害、この 2つを 免責に します。

この 原発の 被災したものが 過去の 歴史上 存在しないくらいに 巨大な 災害で あったのか どうかと いうことは 非常に 問題に なるんですね、そこで。

そのことに 関して 私たちは、過去に 何度も 襲ってきた タイプの 津波が また 襲ってきただけであると 考えています。

たまたま ここは 崖地で ないので、原発に してしまったので 原発震災に なりましたけども、原発が なければ 周辺、南相馬から 茨城県の 北茨城とか あるいは 常陸中に かけてのエリアは 4m から 6m の 津波に 襲われていますけども、過去に それだけの 津波災害が なかったわけでは ありません。

千年に 一度と いうことは 1000年前に あったと いうことですよね。 ということは 歴史上 存在しなかった 津波では あり得ない。

この辺の 津波と いうのは 3回 起きてると いうことが 歴史上 記録されている。 そのうちの 1つが 貞観地震で あり、この 研究が されていました。

なので いいかえるならば、貞観地震と 同じ 津波に 耐えられなかったならば、それは 完全な 瑕疵である、つまり 失敗だと いうことに なる。

この 地震が、津波貞観津波を 越えるか 越えないか、それは 東電に とって 今は 争点に なっていませんけれど、今後 東電存続を 許すか どうかと いうとき 最大の 争点に なり得る 論点なので、ちょっと 詳しく 説明しました。

http://www.youtube.com/watch?v=60u37TNoaVE
(追記) ちょっと 訂正。