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[小倉志郎] "沸騰水型 原子力発電所 BWR の 基本システム" (11年 10月 4日)
続きです。
(追記) 書き起こしの 全文を 文字テキストで upload しました (文字表示は UTF-8)。
http://www4.kcn.ne.jp/~yoitiro/hatena/ogura_111004.txt


(再循環ポンプは ジェット水流に するために あるのか、そのへんを ちょっと)
軽水炉、特に 沸騰水型原子炉の 場合の 特徴なんです。 つまり 加圧水型では こういうことは あり得ない。
燃料棒 全体が 何百本も 円筒形の 炉心に つめ込まれています。 そして 下から 供給された 水が 途中で 沸騰して 蒸気と 水とが 混合した 状態に なって この上へ 出ていく。 加圧水型では 水のまま 温度が 上がるだけです。

ところが 沸騰水型の 場合、途中から 蒸気 = 気体に 変わる 相変化が ある。 そうすると 原子炉の 核反応の 原理からして 水が ないと 核反応が すすまない。 つまり 核分裂によって 発生した 中性子の 速度が 水、減速剤と 呼ばれますが、水によって 速度が 落ち 初めて 次の ウラニウム核分裂に 役だつ。 ですから ここで 沸騰している 水面が 上下することによって 炉心の 熱出力が 変動する。
この 原理を 利用して 逆に 原子炉の 熱出力の コントロール、制御することが できるわけです。 それに 実は 再循環ポンプが 役に たつわけです。
再循環ポンプの 流量を 増してやると 水位が 上がり それによって 熱出力が 増す。 この ポンプの 流量を 減らしてやると 蒸気が 発生しますから どんどん 水位が 下がり 出力は 減る。
ですから 再循環ポンプと いうのが 沸騰水型原子炉に おいては 出力調整装置にも なってるわけです。 デリケートな 出力調整は 再循環ポンプが やっている。
制御棒では ほとんど やらない。 実際の 出力調整は 再循環ポンプの 流量コントロールが 原子炉の 制御に なっている。
だから タービンの 方の 負荷によって 蒸気の 流量を 調整してほしいと いう 要求が くれば 熱出力の 調整を これで やるわけです。 この 流量を どうやって 変えるかと いうと ...
ここに 特殊な 電源、直接 ポンプの モーターに つながっている 交流発電機が ポンプ 1台ごとに あります。 そして 流体継手を 介して 電動機が あって この 発電機には 通常電源が 入っている。 そして こちらの 電動機は 周波数が 一定ですから 回転数は 変わりません。
しかし この 流体継手を 調整することで 出力側の 発電機の 回転数は 変えることが できる。 つまり ここから 出ていく 電力の 周波数を 変えることが できるんです。 ある 意味では 周波数変換器みたいな ものです。
そして その 周波数に 応じて ポンプの 回転数が 変わり 流量が 変わる。 ポンプの 流量を 流体継手で コントロールする。 これは 羽根車が 対抗して 2つ あって 油が 入っていて 油の 量を 増やすと 回転数が 速くなる、そういう 仕組みに なっている。
前に お話ししたように 福島から ジェットポンプが 追加されたと いうのは この 配管を 細くするという むしろ 経済性、ぼくの 感覚では 経済性が そう させたんだろうと 思ってます。
(サービス系の 耐震基準は)
福島第一原発の 1号機、2号機の 頃は 非常用の 系統を バックアップする 海水系は 耐震クラスは やはり A でした。 ただし 使用済燃料プールの システム、これは クラス B でした。 その後 何号機からでしたか A に 格上げ されましたね。
(軽油タンクとかの 設備は)
私は その頃 ディーゼル発電機とか 軽油タンクは 担当してなかったのです。 耐震クラスは どうでしたか。
ほとんどの 機器系統は 当時の 通産省の 管轄でした。 ですから 工事許可申請書も 通産省に 出して 製作とか 据え付けとかを やっていたんです。 へんな 話ですが どういうわけか 軽油タンクと いうのは 消防署の 管轄なんです。 危険物を 貯蔵すると いう 意味で 通産省じゃ ないんです、自治省なんです。 自治省は 消防法と いう 技術基準が あって そこにも 耐震設計が あるんです。 ですから 別の 基準で 耐震設計を やっていた。
タテ割り行政の 影響が 原発にも きていて、官庁の タテ割りは きびしく 他の 省庁が やってたら 絶対に 口を ださない。 通産省が やってたら 自治省は やらない、お互いの 連絡が ない。 そういう 意味でも 細かく 見ていくと 整合性が とれないことが あると 思います。
(どれもが すべて 動かないと)
設計も それぞれ 違うところが やってたり するし ... 順番が あるわけです。 最初に DG が 立ち上がって 電圧が 確立されたら 次に いく。 確立されない うちに ポンプの スイッチを 入れると 力が 足りなくて 発電機の 方が ダウンする。 そういう ことも あって たくさん ある 機械の スイッチを 入れていく 時間と 順番、これが 決められていて 何秒単位と いう かたちで そういう 制御設計と いうのが、この 図には でてきませんけど、非常に 重要なんです。 原子炉の 圧力が 水が 入れられるだけ 下がったら 入れるとか。
特に 非常系は それも ヒューマンエラーが ないように 人の 判断じゃなく 自動的に 動くよう センサーの 信号を コンピュータに 入れ 水位や 圧力が こうなったら この 手続きの スイッチが 入る、そういう 制御設計が からんでくる。
制御設計の 人たちと 実際の ハードウェアを 作っている ところとは 全然 別の 部門です。 ほんとうに 分業で この 複雑な システムが できあがってますから 逆に いうと 全部を 統一して 理解している 人と いうのは ほとんど いない。
(そうなんですか)
電力ケーブル、配電盤、スイッチとか いっぱい ありますし。
(それぞれが 担当する ところしか わからない)
それは 若いとき、入ってから 数年 たったときに 私は 一度 いわれた ことが ある。 アメリカの GE に 行って 1年ぐらい いて エンジニアに 混じって 勉強して 帰ってきた 人に いわれた。 アメリカには マネージャーが いて 全部 わかってて その 仕事を 細かく 分け 各部門に やらせる。 全体の 整合性は マネージャーが 見てるから 各部門は 全体の ことを 知らなくて いいんだ。
だけど そんな マネージャー、ぼくは いないと 思う。 全体の ことが わかっていないのが ほとんど、私は 全部だと。
例えば 当局長さんは 何人かの グループで 運転して 全体の 責任を もっている。 もちろん 運転手順書とかは 細かく 勉強するでしょうし 原子炉取扱主任技術者の 資格を もってると いうことで 一応、基本的な ことは 身に つけてるとは 思います。 しかし 機械の 細かい 設計までは、その 機械の 弱点とかは わかってません。
最近の 自動車は オートマティックに なってて 運転は 簡単でしょうけど 自動車の 構造なんか わからない 人も 運転している。
(わたしも <- 沢井さん :-p )
どこが 一番 壊れやすいとか わからなくても 自動車を 運転している。 それと 同じように これを 運転してるからと いって 全部が わかってるわけじゃ ない。
ぼくらが 入社した 頃は 制御系は IC 回路、集積回路なんて なかった。 さきほど いった 自動制御は 電磁石で スイッチを 動かす リレーが たくさん 並んでいて それで 制御できた。 ところが この頃は IC、集積回路で 中身は 全く 見えない。
むかしは 誤動作したら どこの リレーが 壊れたかは 一つ一つ 当たっていけば この スイッチが 働かないと わかったんです。 今は わかりません。 スイッチが 何百何千と チップに 入っているので どこの スイッチが 誤動作してるかなんて わかりません。 ということは 今、制御系が 故障しても ほんとうの 原因が つかめなくなって きている。
(チップごと 替える)
そうです。 そういう ブラックボックスが だんだん 増えてきている。 便利に なり コンパクトに なり コストダウンされる 良い 面と 反対に だんだん 中身が わからない 範囲が 拡がっている。 わからないままに 運転する。
(運転員の 養成とか たいへんですね)
自動車教習所の 教育程度では 済みません。 取扱説明書なんて キングファイルが 棚の 向こうの 端ぐらいまで 並んでる ほどですから、取扱説明書だけですよ。 その 構造とか 設計の 中身と いうことに なると もっと たくさんの 図面を よまなければ ならない。
たしか BWRレーニングセンターと いうのが 大熊町に ありますが そこの 宿舎が あって 泊まりがけで 何ヶ月か いって 運転の 資格が 得られる。
(今回のような 事故に なったら)
3月 11日のような 事態に なれば マニュアルは 使えず 全貌を つかんでる 人は いないから 対処療法的に 目に 見えてる 異常事態に 対して 対応するのが 精一杯だったんじゃ ないかと 思います、私の 勝手な 想像ですけど。
(あと 3枚目の 図面ですが)

普通の 方は あまり こういう 図を 見ることは ないと 思いますので ちょっと 説明しますと 原子炉圧力容器の 中の 炉心と 呼ばれるのは この 部分です。

この 長さが ちょうど 燃料の 長さに 相当していて 約 4m、ここに 縦方向に 燃料が つめ込まれる。 その 燃料の 間に 差し込まれる 制御棒が ここに ひかえている。 そして 燃料集合体を 取り囲んでいる 円筒形の ものが シュラウドと 呼ばれ シュラウドと 原子炉圧力容器の 間に リング状に 空間が できていて そこに ジェットポンプが ある。

そこから 炉心に フタみたいな ものが あり フタの 上に ニョキニョキ たくさん 筒が 出てるんですが これが セパレーター、汽水分離器と 呼ばれる ものです。 この中には 羽根が ついていて ここで 要するに 旋回流を つくる。 上がってくる 蒸気の 勢いで 旋回流に なって 水の 部分が 振り飛ばされ ここに 穴が あいていて ここから 下の 隙間に おちる。 上に いくのは 蒸気だけに なる。

ところが その 蒸気にも きわめて 細かい 水滴が 残っています。 それは 湿分と 呼ばれ 完全に ガス化 していない 極小の 水滴です。 これは タービンに 悪影響を 与える。 この ドライヤー、乾燥器には クネクネ 曲がった ステンレスの 板が あり 曲がるたびに 湿分が カベに 張り付いて 下に 落ちる。 ということで 湿分が 取れ あとは 蒸気だけに なって タービンの 方へ いく。

原子炉と いっても 単純な 容器では なくて 中に こんなものが いっぱい つめ込まれている。 実際の ところ 燃料集合体だって 非常に 複雑な 構造に なってて 燃料棒が 何十本も タバに なって その 回りに 四角い チャンネルボックスが あるし 下には 制御棒を 案内する ガイドチューブ、ステンレスの チューブが 何本も 立っている。
ですから 炉心が ダメに なる、メルトダウンしたとか いうんですが 底へ 落ちてくると いっても 簡単では ない。 実際 この中が どう なってるかは 10年ぐらいして 中に 近づけるように なってからじゃ ないと ... ここは ステンレスの パイプが ぎっしり つまってますから 人が 入れない、手も 簡単には 入れられない ぐらいですから 現状、炉心の 中が どう なってるかは 私にも 想像が つかないですね。


お、終わった ... oLr