石切場(7)

祖母は結婚する前から習練としてだが、踊りを身につけていた。一方、祖父は若いときから働きにでていたので、仕事一筋かというと、そうではなかった。
ある時は河鹿を飼っていて、その鳴き声を楽しんでいた。河鹿はけっこう繊細で餌のハエもイエバエではなく花の蜜を吸うコバエでなければ食べない。コバエを捕まえるのは母の役目である。ソット近づいて手のひらで一瞬に捕まえる。何度かやってるうち百発百中になったらしい。
また煎茶にもこったようだ。手先も器用である種の木 - 名前は失念した - を加工して専用の盆をつくる。煎茶は一杯目は飲まずに捨てる。それを盆にあけて茶渋を木に染みこませる。
幾度かくり返すと茶渋の色が盆につく。そして母の出番だ。柔らかい布で磨きこむといい色をした煎茶用の盆ができあがるというわけだ。