メモ・津田敏秀さん「健康影響を捉えるための曝露評価とは (3)」
0. 津田敏秀さん「健康影響を捉えるための曝露評価とは (3)」
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
岩波「科学」2018年 7月号掲載
[Non-differential な曝露の誤分類]
1. 問題はこのような現実上避けがたい non-differential な曝露の誤分類 (誤診とも言える病気の誤分類もまた完全に避けることは現実には困難であるが) が、推定したい因果関係による真の影響の程度に (ここでは具体的にはオッズ比に)、どの程度の影響を与えるのかというところである (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
2. 我々は、それを具体的に把握しておきたい (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
表 1 -- 誤分類がない状態
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
------- : 曝露 : 非曝露 : 合計
発症者 : 40人 : 10人 : 50人
非発症者 : 60人 : 90人 : 150人
合計 : 100人 : 100人 : 200人
3. 表1 は、仮想データで、誤分類が完全にない、曝露と症状発症の定量的関係を示している。これが基準となって (次の) 表2、表3 と non-differential な曝露の誤分類が引き起こされていくと想定していただきたい (津田敏秀さん)
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4. そうすると non-differential な曝露の誤分類の影響が我々にも大まかに把握できることになる (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
表2 -- 発症の有無に関係なく、曝露された人の 20% が非曝露者として誤分類された状態 (non-differential な曝露の誤分類)
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------ : 曝露 : 非曝露 : 合計
発症者 : 32人 : 18人 : 50人
非発症者 : 48人 : 102人 : 150人
合計 : 80人 : 120人 : 200人
5. 表2 は、表1 の 曝露されていた人が、発症の有無に関係なく (独立して)、20% 非曝露であったと誤分類された時の 2X2 表である。表1 では 6.00 (95% 信頼区間 2.64-13.93) であったオッズ比が、3.78 (95% 信頼区間 1.84-7.83) に下がっている (津田敏秀さん)
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6. ただし、もともと少なかった非曝露における発症者の数が誤分類により増加しているので、分散が小さくなり 95% 信頼区間の上限は低くなっている (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
7. 真の曝露 100人が発症の有無とは独立して (non-differential に) 曝露がなかったと判断されることは、言い換えれば、曝露感度 (真に曝露されていた人が曝露者であると正しく認識される確率) が 80% であったということである (津田敏秀さん)
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8. しかし特異度 (真に曝露されなかった人が非曝露であると正しく認識される確率) は、表2 では 100% のままで、非暴露の人は全員非曝露に分類されている。それゆえ、ここでは低下したのは感度だけである (曝露した人のリスクが表1 も表2 も同じ 40% である) (津田敏秀さん)
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(そろそろ 誰も ついてこない 気が ... )
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
表3 -- 発症の有無に関係なく、曝露者の 20% が非曝露者へと誤分類され、しかも非曝露者の 10% が曝露者として誤分類された状態 (non-differential な曝露の誤分類)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
------ : 曝露 : 非曝露 : 合計
発症者 : 33人 : 17人 : 50人
非発症者 : 57人 : 93人 : 150人
合計 : 90人 : 110人 : 200人
9. 今度は表3 だが、ここでは表2 における感度の低下に加えて、特異度も低下している (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
10. 曝露されていたにもかかわらず非曝露と誤分類される人がいることにより非曝露者の合計が 100人よりも 10人増えているので一見わかりにくいが (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
11. この非曝露の 110人は、真に曝露がなかった 100人のうち曝露の方へと誤分類されてきた人を除く 90人に、真の曝露者から誤分類されてきた 20人が合わさった 110人であることに注意されたい (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
12. 結局、曝露のなかった人が曝露のなかった人として正しく認識される確率自体はキッチリ低下しているのである。つまり、特異度は 90% へと低下している (10% の低下)。感度が 80% で 特異度が 90% という状況が表3 なのである (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
13. ここにおいて、オッズ比は 2.08 (95% 信頼区間 1.03-4.21) へとかなり 1倍に近づいて、元の 6倍から 6割以上点推定値が低下し、元々の曝露群と非曝露群の違いがぼやけてしまっている (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
14. すでに述べてきたように、non-differential な曝露の誤分類は現実上避けがたいものである。したがって、計算されるオッズ比は、常に 1倍の方向へと系統的な誤差 (バイアス) がかかるということがわかる (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
15. 表1〜3 の解説で見たように、正しく理論を学んでいれば、有害曝露の場合 non-differential な誤分類がもたらす感度と特異度の低下は影響の指標の過小評価 (1倍の方向) につながりはしても、過大評価にはつながりようもない (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月2日
表5 -- 曝露の有無に関係なく、発症者の 10% は症状を見逃され非発症者へと誤診された状態 (non-differential な病気の誤分類)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
------ : 曝露 : 非曝露 : 合計
発症者 : 36人 : 9人 : 45人
非発症者 : 64人 : 91人 : 155人
合計 : 100人 : 100人 :200人
16. なお、(真のオッズ比が高い場合の) non-differential な病気の誤分類の例も示しておく。表5 は診断の感度が下がり 90% になった時の例を示している。やはり、オッズ比は 1倍の方向にバイアスされていることがわかる。
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
オッズ比 : 5.69 (90% 信頼区間 : 2.42-13.71)
17. 疫学研究結果は、国際がん研究機関も述べているように、人における因果関係の間接的ではなく直接的な証拠である (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
18. 曝露による影響がないと主張したがる人たちは、この non-differential exposure misclassification の厳しい 1倍へのバイアスに決して言及しない (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
19. つまり、過大評価のバイアスばかりあげつらって批判する人たち、ひいては文献も示さずに教科書的な疫学研究デザインを批判している人たちは、直接的証拠にもとづいてシンプルに考える人たちではなく (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
20. 単に「疑い」を投げかける仕事をしていることになり、利益相反の可能性を強く疑わせる人たちなのである。このような人たちはしばしばデータにもとづいた議論を行わず、印象だけを述べて主張を行う (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
[暴露の測定における概念と現実]
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
21. 現実は、ほとんどの場合、健康影響と思われる症状が時間的・空間的に多発し、それを認識した後でその原因究明が行われる。原因究明のために調査が行われたとき、有害物質である原因曝露はすでに消え失せていることも少なくない (津田敏秀さん)
22. そして病気の分布の側から曝露を知るという、疫学でしばしば行われる方法に至る。それは、病気の時間的・空間的・属人的分布をヒストグラム・地図・グラフに記述し曝露に関しての仮設を設定し分析疫学により検証するという、記述疫学の定型的な手法とも関連している (津田敏秀さん)
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
過去 70年間 (1950〜2020年) のバイオハザード (黒岩義之さん スライド資料) pic.twitter.com/mzwKbjNSBV
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
第1回 ワクチン接種、HANS 診断時期の分布 (黒岩よしゆきさん スライド資料) 患者数 : 203人 pic.twitter.com/IDtrSVI1fl
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日
疫学の 設計には いろいろな アプローチの 仕方が ありますが、これも そうした 試みの 一つですね。
— seki_yo (@seki_yo) 2018年10月4日