miscellanies

[Kwame Nkrumah]
続きです。

いま 議論を 単純にするために、世界市場を A国市場と B国 (非A国) 市場の 2つから 構成されるものとし、記号を 次のように 定める。

S_a, S_b は、それぞれ A国企業 ないし B国企業の 売上高 (粗付加価値) 合計。

Y_a, Y_b は、それぞれ A国 ないし B国市場の 市場規模 (GNP の大きさ)。

a, 1 - a は、それぞれ A国市場における、B国企業の 市場占有率 ないし A国企業の 市場占有率

b, 1 - b は、それぞれ B国市場における、B国企業の 市場占有率 ないし A国企業の 市場占有率

いま、仮定により A国企業、B国企業の 市場占有率は、それぞれ 他国におけるより、本国における方が 大である (b > a, (1 - a) > (1 - b)) としよう。 A、B 各国の 企業の 売上高合計は、それぞれ A国における 売上高と、B国における 売上高の 和に 等しいから、次式が 成立する。

S_a = (1 - a)Y_a + (1 - b)Y_b

S_b = aY_a + bY_b

この 2式から、世界市場における A国企業と B国企業の 相対的な 市場占有率を 求めると、次式が 成立する。

\Large\displaystyle\frac{S_a}{S_b} = \displaystyle\frac{1 + \displaystyle\frac{1 - b}{1 - a}\cdot\displaystyle\frac{Y_b}{Y_a}}{1 + \displaystyle\frac{b}{a}\cdot\displaystyle\frac{Y_b}{Y_a}}\cdot\displaystyle\frac{(1 - a)}{a}

この式の 中に、B国の GNP の 成長率が A国の GNP の 成長率より 大であるという 仮定を 導入すると Y_b / Y_a は たえず 上昇する 傾向を 示し、その結果、係数 ((1 - b) / (1 - a)) < 1、そして (b / a) > 1 を 考慮に 入れると、S_a / S_b の 値は 低下傾向を 示すことになる。

このような 条件の もとにおいて、世界市場において A国企業が B国企業に 対する 相対的地位の 低下を おさえ、元の 割合を 保持しようとするためには、(1 - b) / (1 - a) の 値を 高めるほかない。 その場合、A国企業は、分母の 1 - a を 低下させるよりも、分子の 1 - b の 上昇の方を 選ぶに ちがいない。 1 - b の 上昇とは、いうまでもなく、A国企業の B国市場への 進出による 市場占有率の 拡大である。

(同様に、B国企業も A国市場へ 進出することで、その 市場占有率の 拡大を はかる) このことは、上式においては 係数 a の 拡大に ほかならない。 かくて、A国企業の 1 - b の 増大のための 努力と、B国企業の a の 増大のための 努力の 相互作用は、結局のところ (1 - b) / (1 - a) を b / a に 近づけるように 作用し、その うごきは、上式によって 明らかなように、やがて S_a / S_b の 値を Y_b / Y_a の 上昇と 無関係に 一定 ((1 - a) / a) たらしめる 方向に 押し進めることとなろう。 このような 状態のもとにおいては、A国と B国の 成長率の 差を 意識することなく、安定した 相対的関係を 確保することであろう。

『寡占 - 現代の経済機構』 '72

ここでの A国とは、戦後 その 経済成長率の 低下を 余儀なくされた U.S.A であり、B国は E.U あるいは 日本を 指す。 すなわち G7 などの、その 多くが 帝国主義を 経過した 経験をもつ 先進資本主義諸国を 意味する。
こうして、かつて 彼らの 植民地支配下にあった 国々への 新たな 経済的侵略 -- 当然、政治的支配を 含む -- の 実質的な 準備が 整えられた。
(この項 続く)