Hukusima Nuclear Plant

昨日、やっと 『科学』 5月号が 手に入ったので、さっそく 読んでみました。
[田中三彦] "福島第一原発の 「耐震脆弱性」を 注視する"

顔見知りの NHK の 記者に、(地震当日の) 未公表データが なんとか 手に入らないかと 話したところ、何日かして その記者から、3月 11日 夜 7時半からの データが 手に入ったという 電話があった。

そんな中、NHK は 4月 8日 (の 朝)、その "極秘" データをもとに、「1号機、震災の夜に 燃料露出直前」 という ニュースを 関村直人 東京大学教授の コメント付きで、ラジオ、テレビで 流した。

もっとも 重要な 問題は 「なぜ 露出直前に なったか」 だったが、そのことに いっさい 触れない そのニュースには 大いに がっかりさせられた。

ぼくも ちょうど そのニュースを 見ていて、いやがる? 関村氏を 研究室まで 押しかけ データを 突きつけて 解説を 求めてたので、なんだかな〜 ... もっと 適任者が いるはずなのにね、などと 思って ぼんやり 画面を 眺めてました。
その後、アナウンサーが 科学部の 記者に 説明を 求めたとき、この記者は すごいことを しゃべりだした。
「1号機は 津波発電所を 襲って 非常用ディーゼルが 停止したため 事故が 起きたのでは なさそうだ。 このデータを 見ると、短期間に 格納容器内の 圧力が 上がっている。 これは 地震そのものによって 原子炉圧力容器が 破損し 水蒸気が 格納容器の中に 吹き出して、結果として 圧力が 上昇したのでしょう」
地震当日は 続けて 大きな 余震が 数回 起きている。 厚さ 16cm もある 圧力容器の 壁に もし クラックが 走ったとしたら、水蒸気が 抜ける前に、余震による 揺れと 容器内部の 高圧とによって 瞬時に 圧力容器は 破壊されてしまう。
そんなことに なったら、圧力容器の 破片で 格納容器は ひとたまりも無く 壊れてしまいます。
自信たっぷりに 説明してたので、ちょっと びっくりしました。 おかげで いっぺんに 目は 覚めたけど ...
[後藤政志] "福島第一原発 炉心溶融事故"

(格納容器の) 圧力抑制室から 蒸気や ガスを 抜く場合は、プール水で 一定程度の 放射性ヨウ素など 粒子状のものや 水に 溶けやすい 放射性物質を かなりの程度、除くことができる (wet venting)。

しかし、希ガスなど 水で 除去できない 放射性物質もある。

いずれにしろ、格納容器から "ベント" することは、放射性物質を (原子炉建屋の) 外部に 放出することになる。

特に、圧力抑制室の 耐圧ベント用の 弁を 操作することの できない場合には、格納容器 ドライウェルから 直接 ベントするが、この場合には 格納容器内の 放射性物質が そのまま 外部に 放出されることになる (dry venting)。

実際に 福島第一原子力発電所からは どれだけの 放射性物質 (核種) が 出ていったのだろうか?
ずっと 以前の data だが、冷却材喪失事故により 炉心が すべて 溶融したと 仮定し、おおよその 割合を はじき出したものを 見ると、建屋 あるいは 格納容器内に、希ガスは 100%、ハロゲン類が 50%、固形物が 1% 放出されると 出ていた。
福島の場合、1号機から 4号機まで すべての 建屋は 爆発等により 破壊されたため、希ガスと ハロゲンは その多くは 外部に 放出された。
また 固形物では、手動による ベント操作、水素爆発 それに 格納容器 破損による 汚染水への 流出を 加えなくては ならない。
それぞれの 炉心は、推定によると、相当程度 溶融しており、それを 合計すれば、1つの 原子炉で 炉心が すべて 溶融した 量にも 匹敵する。
次に、放出された 放射性物質 (核種) の 種類を 見てみよう。
希ガスには クリプトン Kr-90 (Kr-85) と 少量の キセノン Xe-131m とが あり、これは 100% 外部に 出たものと 考えて いいだろう。 その総量は おそらく 京ベクレルという レベルに 達しているのでは ないか。
ハロゲンは ヨウ素 I-131。 放出率は 仮定より 多きめの 90%に 達する 可能性も ある。 その量は 兆ベクレル あるいは それ以上か。
固形物 (微量質状物質) としては セシウム Cs-137、ストロンチウム Sr-89、Sr-90 などがある。 重いため 遠距離へは 拡散しないと 思われがちだが、いったん 放出されると、比較的 大きい 数ミクロン程度でも 10km 以上 飛散することが わかっている。
また、汚染水の 投棄が 問題なのは、濃度の 多少と 関係なく、毒性の強い 微量質状物質が 外部へ 流出することに ある。
これらは すべて 核分裂生成物、つまり "死の灰" だ。
莫大な量の ウラン燃料、その 崩壊熱を 取り去るには どれほどの 時間が かかるのか。 その間、核分裂生成物は 外部に 放出しつづける。
タンクに 移した 汚染水も 長期間は 保存できないので、すぐそばに その処理施設を 設ける 必要がある。
こんなことを 考えてると、気が 遠くなってきました ...
(追記) 微量質状物質 = particle 、これが 内部被曝では 問題と なる。