読書ノート

現代の 飢餓を 知るには、スタインベックの 小説 『怒りの葡萄』から 読み始めるのが いいと 思う (ぼくは 石一郎の 訳を 薦めます)。
スタインベック自身は 戦後、転向したが この小説は 今も 読む価値が ある。
U.S.A. の 零細農民が 土地を 奪われ 飢餓に 向かって 没落していくさまが、旧約聖書と 絡み合わせて 記述されている。
現代の 飢餓の 実態に 関しては、鶴見宗之助さんが 精力的に 訳出した 以下の 書籍が 今でも その有効性を 失っていない。 図書館で 捜せば おそらく 見つかるだろう。
・『食糧第一』 F.M. ラッペ/J. コリンズ著 三一書房(83年刊)
・『世界飢餓の構造』 F.M. ラッペ/J. コリンズ著 三一書房(88年刊)
・『食糧支配』 J. ウェッセル著 時事通信社(84年刊)



『世界飢餓の構造』から 引用してみよう。

(かつて) 中国は 土地と 食糧に 関する 遠大な 再配分計画と 高齢者保障制度の 保証に 加えて、健康管理と 産児制限器具とを 万人に 行きわたらせることによって、史上 未曽有ともいうべき 出生率の 低下を 実現させた。

ところが 中国は 1979年以後、(すなわち 文化大革命の 失敗後) 従来とは まったく 異なった 方針を 打ち出してきている。

人口増加が 依然として 近代化を 阻害しているという 信念に 立って、Den Xiaoping 政権は、世界でも 最も 厳しい 家族計画を 始めることになった。

現在では、すべての 両親が 一子だけを 設けることを 奨励するため、物的な 誘因と 処罰が 用意されている。

だが、バークレイ大学の J. ラトクリフに よれば、

中国は (同じく) 1979年以後に 採用した 経済開発の アプローチによって、(必然的に) 雇用の 保証と 高齢者に 対する 保障制度の 両方を 後退させたのだと いう。

こういった ことのために、(人口の 大多数を 占める) 農家は ふたたび 自家労働に 頼らざるを 得なくなり、大家族 - とくに 男子 - は、ふたたび 家族の 経済的資産と いうことになった。

そして その結果は どうだったのだろうか?

世界でも 最も 厳しい 人口抑制計画にも かかわらず、中国の 出生率は 低下しつづけることが (でき)なかった。

どちらかと いえば、(80年代には) 人口は 微増しているのである! (p62-63)

今世紀に 入って後、中国は 「微増」という 段階を すでに 越えていると 思われる。



上記 3冊の 書籍を 企画/出版した Institute for Food and Development Policy (Food First) は 現在も 継続しており、例えば 朝鮮での 飢餓を 扱った Christine Ahn の レポートは その web page に 掲載されたものだ。
http://www.foodfirst.org/