miscellanies

Network Archives に Ronda Hauben の page を 追加。
ひさしぶりに web で 調べものを したので ちょっと 疲れた。
気分を 変えようと 『インターネット宣言』(isbn:406207480X) を 読んでみると、少し ひっかかる ところが ある。

実は (アメリカの ベル研究所を 核とする ネットワーク) USENET こそが 現在の インターネットの 真の原型であった。

いま インターネットの原型は まるで アーパネットで あるかのように いわれているが、それは 大きな誤解であり、本書で そのことを 明言しておきたい。

たしかに インターネットの プロトコルは アーパネットの ものが使われ それが 起源であるが、通信コミュニティとしての インターネットの モデルは USENET であった。(p101)

書かれている内容は 正しい - が、ほんの少し 曖昧である。
一つは、ここでも そうだが、ARPANET を 取り上げる際に、それが 軍の 研究機関であることを 強調したり (p76-77) また、grass-roots ではないことを 述べて (p101) まるで USENET とは ベツモノのような 記述が ある。
それと、あたかも 対防衛ミサイル網の 整備と 連携して 開発が 進められたように 書かれているが (p76) そのことは コンピュータネットワークの 発展とは 一応 切り離したほうが いいと思う。
実際には、プロトコル実装の 端緒となったのは、人と人との ネットワークの 繋がりが もたらしたものであり、そのことは 著者自身が 監訳した 「ワークステーション原典」(isbn:4756100511) にも 載っているのだが、なぜか 無視されている。
また、紙面の都合で 省かれたのだろうが、USENET が なぜ インターネットのモデルなのかが 具体的に 書かれてなく、単に grass-roots な 組織である とのみ 記述されている。
Kehoe の 「初心者のための インターネット」(isbn:4810185575) - ただし 絶版 - を 参考に 読んでみると、USENET は いくつもの 主張する policy を もった けっこう 傾向の はっきりした 組織だったらしい。
その 結成当初から あった 大きな柱の 一つに、free software の開発、共有 ということが ある。例えば、GNU Project にも 積極的に かかわっていたようだ。
著者自身、当初 UNIX の 日本語環境の構築や software の 配布に 携わっていたのだから、そのことは よく 理解できたはずである。
USENET こそ インターネットの モデルである、と 断言するのであれば、その未来像 (p131-) に、なぜ これらのことを 少しだけでも 示唆するなり しなかったのか。日本は また 別の 条件下にあると 考えたのかもしれないが - よく わからない。
Ronda Hauben に、USENET が Google に 吸収されたときに 書いた 一文がある。

With the privatisation and commerciallisation of the U.S.portion of the Internet, companies like Deja were created which began to archive Usenet posts.

Several users report discontinuing their own archiving when it appeared that these companies were maintaining a large archive.

Some users, however, did not want their posts archived.

They were concerned about the effect on the continuing development of Usenet from archiving by private companies.

The entities that have done archiving like Alta Vista and Deja and now Google are private companies.

The decisions about the nature and goals of their archiving activity have been and are under their control.

(Privatisation and the Clash of Culture)

ARPANET は たかだか 研究所間の ワークステーションを 繋いだだけの ものであるかもしれない。
しかし そこでの 研究結果の 公表は 確実に 保証されており、それは コンピュータネットワークの 当然の 指針とされ、そして このことが USENET にも 受け継がれていったと 考えるのが 自然では ないのだろうか。