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[小倉志郎] "討論会の 結語に 代えて" (9月 8日)
「第2回 原発 Yes or No ? 公開討論会」 の 発言から。
http://www.ustream.tv/recorded/25263122

(最後に) 5分、時間を いただきました。 いろいろ お話ししたいことは あるのですが、その中から 1つだけ 話したいと 思います。

実は 今回、福島の 事故を 起こした 地震は 想定外だった、あんな 大きな 地震が 来るとは 思わなかった。 地震が 大きかったので 津波も 大きかった。

2007年、柏崎原発の 近くの 海底で 中越沖地震が 起きて、東電 柏崎の 1号から 7号までが 大被害を こうむった。 そのときに 7機とも 設計時の 地震加速度を 越えてしまったことが わかった。 私は ECCS ポンプ、非常用安全系の ポンプの 耐震設計を ずっと やってきましたが、それを 知って びっくりしました。

その前年の 2006年、耐震設計審査指針が 改訂されました。 新指針と いわれるものですが、そこには 一応、原発を 設計するときには 耐震設計の 加速度は こう 計算して、その 加速度を 使いなさいと 書いてある。

ところが、2006年の 新指針の 解説ですか、その 基準地震動を 越える 地震が 来るかもしれないという 記述が 付いている。 基準地震動を 越えた 場合に 起きる リスク、残余の リスクと いいますが、これによって 起きる 可能性の ある 放射性物質の 漏洩が、許容できるものか どうかを 評価しなさいと。

私が 1967年に 原子力業界に 入り 2007年、定年退職するまで 耐震設計に たずさわりましたが、耐震設計というものは、その 原発を 襲う 最大の 地震に 耐えうるよう 設計を する。 それで 設計しておけば 大丈夫だ、それ以上の 地震は 来ないという 前提で 設計していた。

ところが 2006年の 新しい 指針では、その中で 基準地震動を 決めておきながら、それを 越える 地震が 来るかもしれないと。 それで、そういう 評価を 電力会社に 対して 要求している。 設計者の 感覚を もってすれば、これでは 設計できません。

それでは 大被害を 受けた 柏崎刈羽を どうするか、すぐには 立ち上げられません。 いろいろな 箇所を 修理し 再起動したいというのが 東京電力の 考えです。

私たちは それに 対し、設計を 越える 地震が 来るかもしれないのだから、残余の リスクは どう 評価したのかを 質問しました。 そして 返ってきた 答えは 「私たちは 原子力安全・保安院と 専門家の 審査を 受けています」 という 返事だけでした。 残余の リスクが どういうものか 検討した その 結果には 一切の 説明が ない、技術的な 説明は まったく ない。

2007年の 地震から 1年半後に 東洋大学で 安全フォーラムが 開かれました。 これは 安全委員会、保安院と たしか 文部科学省の 主催です。 そこに 出てきた ソウソウたる 地震学者が いったことは 「今後 起きる 地震の 大きさは わからない。 そして 基準地震動を 越える 大地震が どれくらいの 確率で 起きるかということも わからない」。 2009年 2月 24日、文京区の 東洋大学 白山キャンパスの 1000人ぐらい 入る 講堂には、各電力会社の 人は ほとんど 来ていたと 思います。

そういう 状況では、普通の 感覚であれば すべての 原発は 止めると 私は 思います。 なぜなら 地震学者が どんな 大きい 地震が 来るか わからないと いうのですから。 一時停止して どうすれば 安全確保が できるかを 3.11 の前に 確認する 時間は 十分に あった。 それを 怠ったことが 3.11 の 原因だと 思います。

みなさんには 冒頭に 紹介した 「原発の リスク評価の しかたについて」 という コピーを 帰ってから お読みになり、自分で 判断してください。

原発の 安全というのは 科学者や 技術者の、科学や技術の 範囲では もう おさまりません。 普通の 人間の 感覚を もった 人が 判断すべきです、以上です。