web archive

[小倉志郎] "沸騰水型 原子力発電所 BWR の 基本システム" (11年 10月 4日)
続きです、


BWR 概略フローシート
http://www.scribd.com/doc/67577310/BWR-Flowchart


それから あと 残ってる システムとして、ここに 隔離時冷却システムと いうのが あります。 通称 RCIC システムと いいますけど これは HPCI システムと 同じように ポンプと 蒸気タービンから できているんですが 流量が 約 1/10、非常に 小さい。 ただ 原子炉の 蒸気を 使って 復水タンクからの 水を 原子炉に 注入してやると いう 基本的な 流れは HPCI 系と 同じです。
ただ RCIC 系の 目的は 原子炉の 冷却材喪失事故に 対する 対応では ないんですね。 これが ある 目的は 原子炉が 何らかの 理由で タービン系から 切り離される、そういう 事態に 対応するための システムなんです。 例えば 発電系統、発電機から つながている 送電系統が 送電できないような 状態に なったら、もう 発電 止めてくれと いうような 要請が 来たときに、発電を 止めますと タービン系は 蒸気が 要らないわけですから 原子炉から タービンへ いく ラインは 急速に 閉めて そして 蒸気を ストップします。 つまり そこで 原子炉が タービン系から 隔離されるわけです。
それは そのまま ほっとけない。 というのは いくら 核反応を 止めても 炉心では 熱は 出続けるわけです、崩壊熱によって。 ですから 出口を ふさいでしまったら どんどん 原子炉の 中の 内圧が 上がって 何も しなければ 原子炉は 壊れてしまう。 そういう 状態に なりますから 通常ですと 主蒸気ラインに 付いてます 逃し安全弁、これが 働いて -- ここには 表示してませんが -- その 逃し安全弁を 通して 原子炉の 中の 高圧の 蒸気が 圧力抑制室に 導かれて 冷やされる。 そうしますと 原子炉の 安全は 守れます。 圧力は 一応 安全弁で 下がりますから オーバープレッシャーに ならない。
しかし 蒸気が 出てくるだけ 水位が 下がってきます。 この 水位が 下がってくるのを 何とか 止めないと 核燃料が 水から 露出してしまって 燃料が 壊れてしまいますから、その 水位を 保つために この 原子炉隔離時冷却系というのが あります。 これが この システムの 主目的なのです。 もちろん 事故時に これを 使っても いい わけなんですけど、主目的としては 事故対応では なくて 原子炉が 隔離されたときの 水位の 低下を 防ぐ。
それは どういう 意味合いが あるかと いうと 原子炉が ホットな ままで 水位さえ 保っていれば 冷えちゃわないで この システムの おかげで 高温のまま 原子炉を 安全に 保つことが できる。 そうすると こちら側の 障害が 取れて すぐに 発電 開始してくれと いったとき ホットで 健全なまま 保たれてますから すぐに 発電が 開始できる。 そういう 意味で この システムと いうのは 生きてくるわけです。 目的は 事故時対応では ないです。
一応、原子炉系の システム構成は こういうふうに なっています。
それから もう一つ 説明し忘れましたけど ここに 原子炉再循環系と いうものが あります。 これは 一番 中心の 一番 大事な システムで 最初に 説明しようと 思ったんですけど 一番 最後に なりました、すみません。

これは ごく 簡単な ポンチ絵で だいぶ 省いてありますけど これが 原子炉ですね、そして ここに 炉心が あります。 その上に セパレーターが あり、その上に ドライヤーが あり、炉心で 発生した 蒸気は ここから 出て行く、こういう 流れに なっています。
一方、炉心に 入ってくる 水は どこから 来るかと いうと、タービン系から 給水ラインを 通し スパージャーを 通して この 炉心の 回りの ドーナツ型の 領域、ここに 給水が 入ってきます。
そして その 給水は 一部を 原子炉再循環ポンプと いうもので 吸い込みまして -- 全量では ないんです -- 入ってくる 水量の 1/2 とか 1/3 を 原子炉再循環ポンプで 吸い込みまして その ジェットポンプの 駆動水として ここへ 噴射させます。
そうすると その 噴射した 水が 回りの 水も いっしょに 引っぱり込んで、そして ジェットポンプを 通過して 炉心の 下を 回って 炉心に 行く。 ですから 給水は ここから 来て そのまま 引っぱり込まれていく 水も あるし、もう一つは 下まで 行って 再循環ポンプを 通っていくのも ある。 ちょっと 流れが 複雑に なります。 これが 原子炉再循環系の 仕組みです。
なんで こんな メンドクサイことを するかと いうと ...
福島の 第一発電所で いうと 1号機から 6号機まで 全部 共通の システムに なっています。 しかし これ以前、日本で 1つ BWR が できてまして それが 原電 敦賀の 1号機 軽水炉、このときには ジェットポンプは ないんです。 つまり 給水ラインから この エリアに 入ってきた 水は 全量 100% 再循環ポンプに 引っぱり込みまして、そして その 水を そのまま 炉心の 下に もってくる。 給水が 再循環ポンプを 通ってくる 流れとしては 一通りしか なかった。 そういう システムだったんです、敦賀の 1号機は。
福島の 場合には 給水の 1/2 とか 1/3 を 再循環ポンプに 流せば よかった。 敦賀のときは ポンプの 流量が 非常に 大きく、外部に 引き回す 配管の 口径も 大きくなっている。 太い 配管を 格納容器の 中で 引き回さなきゃ いけない。 しかも 敦賀には この 再循環系の ループが 3系統、3本 あります。 福島は 全部 2系統です。
つまり それだけ いっちゃ 悪いですが コストダウンに なってるし、もう一つ 安全面から いえば 冷却材喪失事故 いわゆる LOCA を 考えるときに、最大の 破断を 仮定するとき 破断する 配管の 直径が 小さくなるわけです。 そうすると 事故の 規模を 算定するとき 大きな 配管が 破れるより 小さな 配管が 破断したほうが 安全系の 設計が 楽になるんです。 つまり 非常に 大きな 配管が 切れるとすれば 短時間のうちに 原子炉水が ほとんど 出てしまう。 それが 破れる 配管の 径が 小さくなれば 対応する 安全システム、その 設計も 楽になる。 そういうような ことで 敦賀のときは なかった ジェットポンプを 福島から 設けたわけです。
その他に この ノズルの 位置が かなり 高いところ -- 燃料棒の 長さが 炉心の 一番 下から 4m あって -- これに 対して 2/3 とか 3/4、そこまで ノズルの 高さが ある。 したがって 原子炉に つながる 配管が 破れても この 高さまでは、蒸発してしまうのは 別として、炉心の 水位が 保たれる。 どんな 大きな 配管が 破れたとしても 瞬間的には 出ていかない。 炉心が 水面上に 露出することは ない。 そういう うたい文句が ありました、福島 1号機を 建設した 当時は。 それで いいもんなんかな、なるほどと 当時は 思っておりました。
これが 再循環系の システムです。 これは MARK I、つまり 福島第一原発の 1号から 5号までは こういう 形です。 それから MARK II、つまり 福島第二原発の 1号から 4号も こういう 形です。 柏崎の 1号から 5号までも この 形です。
そして 柏崎の 6号、7号から いわゆる 改良型 軽水炉 アドバンスド BWR、ABWR という 最新型に なります。 原子炉の 外側に ポンプを 置くのでは なく 今度は 炉心を 取り囲む かたちで 小さな ポンプを 10台、ちょうど 輪のように 並べる。 それは 原子炉の 中に 回転する 羽根車が あるので インターナルポンプと いってます。 ですから 柏崎の 6号、7号から まったく 違った 形に なってる、そういう 再循環系の 変遷が あります。
一応 これで 原子炉系を 構成する システムに 全部 触れました。
あと サービス系の ことなんですけど、サービス系と いうのは 主要な 系統を バックアップする、助ける そういう システムだと いうことで、何か ワンランク 重要度が 低いのではないかと いう 印象を 受けます。 しかし 非常時に 働かなければ ならない 安全系が 動くためには、実は この サービス系の 中でも 特に 海水を 供給する 系統は 絶対 必要なんです。 そういう 意味では けっして 重要度が 低いわけでは ありません。

例えば RHR 系、残留熱除去系ポンプ あるいは コアスプレーポンプ、こういう 重要な 安全系の ポンプを 回すためには、回転機ですから 絶対に 軸受けの 冷却を しなければならない。 ですから その 軸受けの 油の 冷却とか あるいは 軸受けを 直接 冷やすために 海水系は 必要です。
それから 残留熱除去系の 熱交換器にも 海水が いるわけです。 このへんの 海水系は 事故時には 絶対 生きてないと いけない。
それから ここに 非常用ディーゼル発電機が ありまして、この モーターを 動かすためにも 絶対に 生きてないと いけない。 ディーゼルエンジンも 巨大な 回転機ですから 当然、冷却水が 必要であると いうことで このへんも 生きてないと ダメだと。

ここには 書いてないんですが ディーゼルエンジンには 燃料が 必要です。 その 燃料は 軽油です。 ですから この 建屋の 外には 巨大な 軽油タンクが あります。 そして 軽油タンクから 軽油ディーゼルエンジンに 送る 燃料輸送ポンプが また 必要です。 これも 屋外、タンクの ワキに あるんです。
わたしの 想像では 多分、今回の 津波で 燃料タンクの 回りには 海水が 来て 小さな 軽油輸送ポンプも 水に つかったんじゃないかと 思います。
だから 原子炉系の 安全を 守るために これだけ いろいろな システムが あるんですが、その システムだけでは なくて、それを サポートする システムも たくさん あって それらが 皆、健全じゃないと 原子炉の 安全は 保てない。 こんなに 複雑な システムに なっていて -- 安全系は 何重にも あって 一つ 働かなくても ダイジョウブなんだと いう 説明が よく ありますけど -- しかし 逆の 見方を すると、いろんな ところに 弱点が ある、弱点だらけだと いうのが 原子炉系です。
火力発電所だと こんなものは いらないんです。 ボイラーの 中の 水を 常に きれいに しておくとか ないですし 当然、ホウ酸水注入系も いらない。 それから 止まった後 冷やすための 残留熱除去系や 炉心スプレーも いらない。
いかに 原子炉系と いうものが 普段は 使わないけれども 万一のときの ために ある、そして それが 有効に 働くときは 破滅的な 状態、例えば LOCA、原子炉冷却材喪失事故なんて 破滅的な 事故ですね、そういう ときにしか 役に 立たないものを たくさん ぶら下げているのが 原子炉系だと いうことです。
これで 原子炉まわりの イメージが だいたい つかんで いただけたでしょうか。


ま、まだ ある ... oLr