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原発はなぜ危険か―元設計技師の証言 (岩波新書)
[田中三彦] "原子炉圧力容器と 脆性破壊" (1988年)
ダイヤモンド社の 雑誌 "BOX" の 主催による シンポジウムから、

ぼくは 今日、徹底的に たった 一つの ことに こだわるつもりで 来ている。

それは -- 昨日、ぼくは ちょっと 準備に いそがしくて 見てなかったのですけど、NHK でも やってたらしいんですが -- 脆性破壊について、その 一つだけ、ぼくは このことだけを ずっと いい続けたいと 思う。

脆性破壊というのは、あまり ご存知ない方が 多いと 思うので、これは ぼくは ずっと テーマに したいので、よく 理解して いただきたいのですね。

Vessel (圧力容器) が 突然の 大破壊を する パターンです。

これは (先ほど) 笑った方は なかなか 想像できないかも しれませんけど、1940年の頃には これで 突然 船が 沈んでます、大量の人が 死んでます。 それから、これは 化学プラントや ボイラーでも 起こっている 現実的な 事故です。

これが 原子炉圧力容器という ところで 起こらないかという ことが 一つの ポイントに なるはずです。

それは 今日 すぐ 起こるかどうか わからないけども、あとで ご説明しますように、被曝するのは 人間ばかりじゃ ないんです。 材料が 被曝するんです。

こうやって 今、36機が 動いている。 それは 当然 核燃料を 覆ってますから、材料が どんどん 被曝していく。

それで 被曝した 結果 どうなるかというと、ずいぶん 脆く (もろく) なる。 それで、脆くなると 大崩壊が 起こる 可能性が ある。

さっき 英文の レポートが でてきたのは、その 指摘を してるんです。

ご説明しますと 脆性破壊というのは、脆い (もろい) 破壊で、日常 見られるものとしては、ガラスの 破壊なんかは その 典型的な ものです。 特徴は 破断面に まったく 伸びが ないんです。

その 反対の 概念と いうのは 延性破壊と いうものでして、伸びが あります。 これは ぼくらは 日常的に だいたい 鉄なんかを ひん曲げて 壊してますけど、ああいう 伸びが あります。

それで、脆性破壊と 延性破壊とは 明確に 区別する 温度が あるわけじゃ ないですけど、この 二つの 関係は、温度が 低くなると (脆性破壊が) 起こりやすくなる、そういう ものです。

じゃあ、鉄鋼みたいな 金属材料ですね、これが 脆性破壊するのは どういうときかと いうと、それは いくつかの 条件が 全部 揃うと 起こる 可能性が ある。

それは 信じられない 小さな 力で 瞬間的に 脆性破壊を 起こす 可能性が ある、こういうのを 低応力破壊と いってます。

どんな 条件が 起こったときに 脆性破壊が 起こるかと いうと、まず 一つは 材料の 使用温度が ある 特定の 温度 -- これのことは NDT (無延性遷移温度) という 専門用語が あるんですが -- その NDT であると 理解して いただきたいと 思います。 材料を ある 特定の 温度より 下で 使ってると、これは 起こる 可能性が ある。

それから、欠陥が 存在している ことが 必要です。 欠陥と いうのは 溶接の 欠陥でも いいですし なんでも いいが、とにかく 欠陥が あると。

それから 材料に 力が 作用してないと なかなか 壊れにくいです。

なお、材料の 板厚が 厚い、厚ければ 厚いほど これは 脆性破壊が 起こりやすい 条件に 入ってきます。

それで、この いくつかの 条件が 原子炉圧力容器で 満たされて 'ない' のかに ついて 比較してみると、まず 材料の NDT 温度より 下で 使われると まずいですから、材料の NDT 温度は 最初は 40度F (5.5度C) に 設定されてますけれども、それに 安全を 見込んで 60度F -- 経験上の 見込みですが -- 一応 60度F 以上に (60度F プラス?) して 運転するように している。 これは ぼくの 判断ですと やってるから マル ○ です。

二番目は、素材や 溶接部、鉄や 溶接部に そういう 欠陥が ないか。 これに 関しては 作ってる 人は ないと いう。 それに 対して 現実は どうか。 これは 人間、完全じゃ ありませんから なんとも いえない。 ここは クェスチョン ? です。

三番目ですね、材料に ある 程度、力が 作用する。これは 70気圧とか 120気圧とか かかってくるから 当然、作用していなければ おかしいです。 だから これは 脆性破壊の 条件から いうと バツ × です。

それから 厚さは 非常に 厚いです。 BWR だと 150mm 近く、PWR だと もっと 厚いです。 そういう 厚いものは 脆性破壊を 起こしやすい。 これは まれに見る 厚さですから 脆性破壊には 不利です。

で、原発というのは (このうち) 唯一、なにに 依存しているのかと いうと、NDT 60度F に 依存しているわけです。

簡単に いいますと (グラフでは) ヨコに 温度、タテに 脆さを 測る 吸収力エネルギーと いうものですが、最初の 素材が こんなものです、原発は 高いところの エネルギー、脆くない ところで 使われています。

ところが ずっと 中性子の 被曝をして いきますと、これが 横へ ずれてきます。 それから、棚も、USE (上部棚) エネルギーも 低くなります。

カルメラ -- 砂糖を スプーンに とって つくる ボロボロの おやつですが -- あれが イメージとしては 近い、結晶構造が スカスカに なっていく、そういうふうに シフトする。

これが 使用中に どれぐらい シフトしているのかと いうことに 関して ...

これは アメリカの Section Eleven といって、使用中 検査のとき どういうふうに 評価していくか、クラックなんかが 見つかったとき どう 評価するか 書いてある。 日本でも これは 反映されている はずですが、そこには 書いてあるんですが、「評価しきれない」、1960年代から アメリカでは 材料テストを 行ない、いろんなことを やってきたのに、未だに "In Cource of Preparation"、まだ 提示できないんです。

それで、どれぐらい ずれるかと いうのは いろんな 説が ありますけども、あとで もし 必要でしたら お見せ致しますが、150度C ぐらい ずれる 場合も ある。 それには 異論が あるかも しれませんが、温度によっても 違うし、出力、中性子の エネルギーとか 密度、そういうものによって 変わってきますから なんとも いえませんけれども、非常に 危ない ずれを すると いうことだけは わかってます。

Vessel (圧力容器) ですけど、その 起こす 可能性の あるところは (一つは) 図に 黒々と 描いている 溶接部です。 きちんと 計算したわけじゃ ないですが、溶接の 継目を 全部 合わせると 120m から 200m あります、一機です。

36機 かけると 数km あると いうんです。 その 数km の 中に ぼくらが 見過ごしてる 欠陥が 一つ (以上) 存在する 可能性が あり得ると いうことです。 これは 一機の 問題では なくて、全体で 考えないと いけない。

これは (圧力容器の) 構造なんですが、たくさん ノズルが ついています。 こういうところに 欠陥が 発生する 可能性を もっています。 溶接部だけじゃ なくて、こういう ノズルの ところから 欠陥が 発生する 可能性が ある。

それについて 先ほどの Section Eleven に こんな 図が でてますが、こういうふうに ノズルの コーナーのところに 欠陥が 入らないか どうか 検査しなさいと、これは 最近の 図です。

そのような 条件が ととのってる 中で、やむをえず ある種 過酷な (例えば) 急冷みたいな ことで、それによって 熱衝撃を 受け、欠陥の 近くに 大きな力が 発生しまして、そのため 欠陥が 急激に 拡大して 事故が 起きる。 先ほど 広瀬さんが 見せましたのは その レポートです。

それは アメリカの 原子力規制委員会 (NRC)が スポンサーに なって、オークリッジ国立研究所と いうところが 出したもので、原発反対運動の 人が つくったものでは ないんです。

あるいは、起動 または 停止時、比較的 普通の 運転の ときですね、さっき いいましたように、温度が ずれてくる 中で 欠陥が 存在してると、普通の 起動停止の 状態の 中で 大規模な 事故が 起きる、これは あると いうことで、このことに 関しては だれも 否定できないのです。

(映像) http://www.youtube.com/watch?v=gqqKp4ifVgI
http://www.youtube.com/watch?v=5KVwQkk0zT8
(参考) 8月 19日、原子力資料情報室で 井野博満さんの 照射脆化に 関する Ustream 中継が 予定されています。
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1173
(追記) ちょっと 訂正。