miscellanies

この日記でも 何回か 取り上げたし ... ね。
[Ken Russell] "The Devils" (1971)
この映画には 2つの 主要な テーマが 含まれていて、1つは 17世紀 ヨーロッパにおける 宗教病理 (古野清人) であり、もう 1つが フランス絶対王政の 確立 -- 宗教を 利用した -- だろう。
そのことを フランス文学の 歴史の 側面から 見てみよう。
フランス古典主義形成の 背景

(例えば) フランス・アカデミーの 創設の 産婆役を 勤めた ボワロベールは ... 根っからの 法曹 (ジャン・ド・ローブ) である。 ... フランスを 救うのは リュソンの 司教 リシュリユーだと 早くから 見通していた 男で、実際 彼は リシュリユーの 秘書と なったのである。

(また) 1639年に 『詩法』を 刊行した ラ・メナルディエールの 本職は 医師であるが、ルーダンで 狐つきの 事件が 起こったとき それに 介入し、警察当局の 肩をもち、それで リシュリユーの 知遇を 得(た) ... (彼も) また れっきとした リシュリユー派、秩序派の 人間である。

- 小場瀬卓三

さっそく、ルーダンの 名が でてくる。 法曹貴族は この頃、ブルジョアジーの 台頭に ともない、世襲貴族に 対抗して その勢力を 伸ばしつつあった。
では、リシュリユーとは 何者なのか。

(アンリ四世の 死後、マリー・ド・メディシが 反対派を 抑えるため) 思いついたのは、リュソンの 司教 リシュリユーを 大臣として (宮廷に) 送り込むことであった。

リシュリユーが 宰相に なったのは 1624年の ことだが ... 嘆かわしい フランスの 状態を 救うためには、国王の 権力を 強化する 以外に 道はないと、(ルイ十三世の 下で) 絶対主義政策を 推進する。

- 小場瀬卓三

リシュリユーと その後継者、マザランとにより フランス絶体王政は 確立する。 だが、リシュリユーの 排除しようとしたものは、彼を 取りたてた マリー・ド・メディシや 世襲貴族だけでは なかった。 そして ルーダンの 悲劇が 起きる。
自治都市と 絶対王政

(かつて) アンリ四世は プロテスタントに 礼拝の 自由を 認めたが、30年も 殺し合いの 戦争をやった 挙句であるから、武装していなければ (プロテスタントの) 礼拝の 自由は 空文であった。

ラ・ロシェルを 初めとし、南仏の プロテスタント諸都市は 戦後も 武装したままであり、税金 その他のことで 気にいらないことが あると、政府の 言うことを 聞かなかった。

リシュリユーは 1627年から 29年まで、約 3年間 かかって ... ラ・ロシェルを 包囲、降伏させ、(また、ルーダンを 含む) その他の プロテスタント諸都市を つぎつぎに 武力で 制圧 ... (当然だが) その指導者を 厳しく 処刑弾圧した。

- 小場瀬卓三

このとき 信徒に 対して、あからさまな カソリックへの 改宗は 強制されなかった。 だが その後、自治を 失った プロテスタントは フランスで 次第に 衰退していくことと なる。
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD12268/story.html
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Devils_%28film%29